噴火湾の恵みをいただき、
ありのままの姿で届けること。
それが、漁師の使命。
噴火湾に面した森町。秀峰駒ヶ岳を仰ぐ漁業の町で、
イチマル澁谷漁業部は、大謀網と呼ばれる定置網漁を営んでいます。
豊富丸の船主として漁に出る３代目漁師の澁谷俊也さんにとって、
漁をする天然魚も、漁をおこなう仲間も「安全」が第一。
その思いは潔いほどシンプルだからこそ、決してぶれることのない信念です。
まだ闇が海を覆う明け方、漁船の灯りをたよりに「豊富丸」は網に向けて出港。
意外にも港の人影が見えそうなほど陸から近い場所に、イチマル澁谷漁業部の大謀網はあります。
ほんの少し港を離れただけで海が深くなる噴火湾の地形こそ、岸から近い場所で多くの魚がとれる理由。
漁場から港や市場が近いため、鮮度を保ったまま水揚げできるメリットにつながります。
網に滑り込むようにして船が定位置に着くやいなや、素早い手さばきと阿吽の呼吸で網をたぐり寄せていく漁師さんたち。
次第に浮かびあがってくる魚影が確認できるようになると、小魚が逃げまどう姿に大物の魚がかかっている期待がふくらみます。
大きなタモ網で魚をすくいあげたら、いよいよ作業は大詰め。
魚種を手作業で仕分けながら、血抜きや神経抜きをおこなう魚をマキリ小刀で捌いて内蔵を取り除いたのち、
殺菌海水で鮮度を低温に保つシルクアイスに漬け込んで血抜きをおこないます。
一連の作業はほぼすべて手作業。船上の仕事は、大胆かつ細やかなものです。
空がピンク色に染まり噴火湾の海が銀色に輝きはじめる頃、網揚げの作業は終了。
真っ赤な太陽と青いシルエットを浮かべる駒ヶ岳の稜線を背に、船は港へと急ぎます。
船から流れ落ちる小魚を狙って飛び交うカモメを引き連れながら、ひと仕事終えて港へ帰る漁師の顔はどこか晴れやか。
６月から１２月まで漁は休みなく続きます。
魚をとり、船上で捌き、鮮度を保って港へ運ぶ。
網を上げ、網を取り替え、網をつくろう。
潮の流れを読み、編み目を変える。
大切なのは、細やかな手仕事と漁師の勘、
そして食材への感謝の気持ちと思いやり。
時に過酷で、時に優しい大自然が相手の仕事だからこそ、
魚一匹の大切さを知る渋谷さん。
イチマル澁谷漁業部の魚がきれいなのは、
魚を大事に扱っているからに他なりません。
message from
（株）ジョウヤマイチ佐藤
秋山 公司
澁谷さんは、全道的に沿岸漁業の中では規模の大きい漁師さんで、今まで北海道の水揚現場近くで仕事をしていた中ではピカイチ魚を大切にする漁師さんです。
良く言われるのは、北海道の漁業（漁師さんは）量が多く取れるので扱いが丁寧じゃないという風に言われていますし実際にそのような場面も見受けられることはあります。
確かに、一度に何十トンも陸揚げしなければならない場面ではのんきに作業をしていたのでは魚が悪くなってしまいますし海が荒れているときは事故にもつながります。
そんな中、澁谷さんに秋鮭を船の上で水揚げ直後の生きているうちに活〆して血抜きをし、その後即座に神経抜きをしてくださいとお願いしたところ、すぐに取り組んでくれました
もちろんそのために船に滅菌海水で造ったシャーベット状の「シルクアイス」という特殊な氷を出港前に積み込んで、どんな魚も基本は一緒で、活きているうちに血抜きをシッカリして冷やし込みをすると身の鮮度が全く違い臭みも無く美味しく食べられます。
それに加えて神経抜き処理をすると益々鮮度の保たれた美味しい魚になることはわかっていますがなかなか不安定な船の上で命がけで沖で作業をしている中で「船上活〆神経抜き」処理をする漁師さんは今までなかなか出会ったことがありませんでしたし、ましてや規模の大きい漁師さんは一人もいませんでしたが澁谷さんは、「魚に良いことなら」と即答でした
もちろん、大量に獲れるもの全部は出来ませんが、できる範囲で出来る分だけを自分の獲った魚を大切にし、美味しく食べてもらうために努力を惜しみません。
勢い良く網の中で泳ぐマグロも、銀色に輝く秋鮭も脂の乗った秋のブリも、大切に大切に愛情をこめて水揚される澁谷さんの魚は「旨い」に決まってます
and MEG Books
船上で目に飛び込んできたのは勢い良く水揚げされる魚と、漁師さんたちの力強さ。
魚への愛情がビシビシ伝わり、シンプルにカッコいいと思いました。
Editor in Chief / KAZUE OKAWA
陸地では、優しい人柄と語り口調が印象的な澁谷さん。海に出ると表情が一変する様子は、まさに「海の男」！ピンク色に染まる、明け方の駒ヶ岳の景色が忘れられません。
Copywriter / SAORI FUSE
撮影後にいただいた、番屋ご飯。
中へ入ると、美味しそうな炊きたてのご飯と、水揚げされたばかりの新鮮な海の幸。
澁谷さんのご家族もまた愛情あふれた方々で更に感動しました。
Photographer / MEGU